一八七一年、三十七歳 のウィリアム・モリスは 病気の妻と子どもたちの ために、夏をすごせる家 をさがしていた。 「僕の目がどこに向いた と思うかい。ケルムスコ ットさ。ちいさなテムズ 川に石を投げればとどく ようなところだ」
 それがケルムスコット ・マナーとよばれる古い 家であり、特産の灰色の 石でつくられた村々が点 在するコッツウォルズ地 方はモリスの理想の土地 となった。
 石造りの教会や巨大な 穀物倉庫。緑の丘に彫ら れた白い馬。古代の石の 遺跡。テムズ川にかかる 古い小さな橋。学生時代 をおくったオックスフォ ードの街。……
 それらはモリスの芸術 にくっきりと影を落とし ている。
 いまもこの地方に息づ いている、モリスゆかり の風物をたずねる紀行エ ッセーにして、モリスの 生涯と活動へのすぐれた 入門である。
 本文で紹介される美し い風物をおさめたDVD がついている。