はじめに――――民家をめぐる人びと
古い民家を残したいと、相談に来られる方には、不思議と女性が多い。
一九六五年から、民家をなおす、あるいは残す、そして、のちには「再生」する仕事に携わってきたが、それらを支えてくれたのは、おおむね女性たちであった。
生活のぬくもりや、子どものころからのあたたかい思い出が、家と一体となって残っているのだろう。自分の人生に深いかかわりを持った民家が、存亡の危機に立たされたとき、切実な思いで立ち上がってくれた。
その女性たちの情熱が、建築家である私の心を開いてくれた。彼女たちの願いをなんとかかなえようと、工夫をこらすうち、いつしか、「古民家再生」にたどりついたといってもいいのかもしれない。
「果たしてこれ以上のものを造れるだろうか」
よく民家を前にして思ったものだ。長い時間と風土の中で育まれた民家は、残るべくして残った究極のデザインであり、何よりも美しい。建築家としての私は、そのおおらかな空間を活かすように、再生を行ってきた。むしろ余分な自己主張はいらなかったのかもしれない。
女性たちや民家そのものがもつ力に励まされ、たどってきたのが「古民家再生」であった。また、その裏には、古いものを見直そうとする時代の気運が働いていた、ということもあるだろう。最初から、自分の計画やもくろみがあってやってきたことではなかったことを強調しておきたい。
多くの人びとに支えられた、民家をめぐる物語(ものがたり)を始めてみよう。
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