グーテンベルクが最初に活版で『聖書』を印刷したのは一四五〇年頃のことだった。その後、印刷術はヨーロッパ中に急速にひろまり、本やパンフレットが大量に印刷されるようになる。
 だからといって、当時の人々がすぐに本を読むようになったわけではない。出現当時の活字本は「読む」ものではなく、まずは魔力を秘めた護符のようなものだった。
 では、今日の私たちのような「読者」はいつごろ、どのようにして誕生したのだろうか。
「読書」という、ごくありふれた行為にも歴史がある。それを解明することにこそ歴史の本当の面白さがある。この本はそんな本物の歴史だけがもつ知的スリルをたっぷり味わわせてくれる。
(11月下旬・晶文社刊・税込四四一〇円)

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『活字文化の誕生』
ジャーナリズムが形成される過程を浮き彫りにする、印刷と言論の文化史。
図版多数。日本出版学芸賞受賞。
(税込三九九〇円)