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失われゆく下町を見つめてきた著者が、めまぐるしく変化する東京を一歩離れ、「旅」に出た。向かうは、千葉・埼玉・神奈川など東京近郊16の町。時には文庫本を旅の友に、時には地元の人と話に花を咲かせながら、歩き続けた。
船橋の住宅地で太宰の旧居跡に出会う。川と寺と緑の町・市川で荷風晩年の足跡を辿る。犬吠埼で新珠三千代映画に思いをはせ、「オキュパイド・ジャパン」の面影のこす本牧で、野良猫を眺めビールを一杯……。
名所旧跡だけが旅の醍醐味ではない。身近にも時代の光と影が交差する場所がある。平凡だからこそ記憶したい風景がある。そんな心の隠れ里を散策するエッセイ。
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