「神保町には古書の記憶がある」。著者の紀田さんはそういいます。
 町名の由来は、江戸時代、この地区に広大な屋敷を構えていた神保伯耆守に因むもので、明治になって大規模な市区改正が行なわれ、最初の古書店・高山書店が誕生します。創業者は有馬藩の弓師だったそうです。
 ついで有史閣(のちの有斐閣)、三省堂などが開店し、明治一八年頃には神保町から小川町にかけて約五〇軒の書籍業者が営業していたといいます。この地域は、全国から近代日本を担う優秀な学生たちが集まっていたところで、勉学のための書籍のリサイクル・システムが成立したのでしょう。神田小唄に「屋並屋並に金文字飾り」と唄われる街の発展はここにあったのです。
 そんな街の記憶と、一愛書家の自分史を重ねながら、神田古書街・神保町の戦後の隆盛から現在立ち至っている苦境を、愛惜を込めて綴るエッセイ集です。併せて、体験的古書探索の秘訣も披露します。古書ファン、神保町街歩き必読の一冊です。