わたしたちがいま生きている社会は、科学技術はどんどん発展していき、経済は右肩あがりで成長し、それにつれて生活はより豊かに、より便利になっていく……という神話が崩れたあとの成熟社会。明日も明後日も、退屈な「今日」の繰り返しでしかない世界で、よき生をまっとうするため、わたしたちに残された最後の倫理こそ〈絶望〉ではないか。
 「生きている実感が持てない」「自分という存在の意味がわからない」と手首を切る若者たち。あるいは「買い物依存症」に陥りながらも「買いたいものがみつからない」と悲痛な声をあげる消費社会の申し子ともいうべきコギャルたち。そうした彼ら・彼女らに対し思想は、哲学は、いままで応えるすべを持たなかった。
 思想の力は〈物欲〉とどう向き合えるのか? フロイト=ラカンの精神分析理論、フーコーら現代思想の知見を使い、爛熟する資本主義世界の欲望構造を分析する長編文化政治評論であり、〈消費マインド〉を精神分析の俎上にあげる本書は、〈知〉の世界における「堕落論」ともいうべき問題提起の書である。