勝見充男
骨董屋の非賣品

「私にとって、取り扱う品物は、すべからく自分の分身なのである。品物を褒められると、自分を褒めてくれたが如く有頂天になる。いくら家で使おうと思って買ってきた物でも、欲しいと言われる讃辞にはかないようがない。
実は、そのような、お客と売り手のやりとりが、骨董における商売上の理想ではないかと思っているのである」
 著者の勝見さんはいま一番活きのいい骨董屋さんだ。代々木上原に構えている店は、和洋を問わない、独自の眼に貫かれた品物が、大事に並べられている。
 少年の日に買ったラジオや革のカバン。季節ごとに取りだす常滑山盃や刷毛目徳利。どうしても手にしたかった陶片に大和絵……。
勝見さんが大切にする品物の数々、そして自分を育ててくれた骨董道の先輩がたも紹介する。骨董屋さんによる、骨董の内緒ばなし、珠玉の骨董エッセイである。