日本での映画興行記録を塗り替え、第75回アカデミー賞アニメーション映画部門を受賞したニュースも記憶にまだ新しい、宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』。その主題歌「いつも何度でも」の作詞を手がけた詩作朗読家・覚和歌子さんによる、待望の初エッセイ集が本書。

「ひとは、目に見えているものを真実として生きがちだけれど、こころの思いや今日の天気、場の空気、ご縁と呼ばれるめぐり合わせの妙など、実は目に見えないちからにずいぶん左右されて暮らしている。可視と不可視の現実のあわい。そこに在るよりほかない人間を、最も遠くて最も近い自分というサンプルを通して眺めてみたいと思った。さいわいにも、表現の仕事をしている。説明のつかないものとの付き合いは深いのである」

 こう語る覚さんは、「神さま、とかそういったことが好き」で、心霊、UFO、伝説、民間療法、気、遺跡巡り、前世、目に見えないこと、手に触れられないもの、いのちの法則、常識や決まり文句を解体して再構築すること……など、目に見えないもの、説明のつかないものとのつきあいをとおして、二十一世紀という時代を見ようとしている。そんな覚さんの不思議な魅力がぎっしり詰まったエッセイ集。エッセイとともに収録された、写真家・首藤幹夫さんのせつなくやさしい写真世界も、本書に彩りを添えている。