「ろう」であることは、多くの耳の聞こえる人が考えるようなハンディキャップではない。彼らには豊かな世界、「ろう文化」がある。そしてコミュニケーションに用いる手話こそが、何世代ものろうの子どもたちが学び、創造性を加えて手渡してきた文化の基盤なのである。
 本書は、ろう演劇や映画、手話によるジョークや歌、詩など、思いがけない資料を使用し、カルチュラル・スタディーズの成果も取り込んだろう者自身による「ろう文化」入門の決定版。
 そもそも、耳が聞こえないってどういうことだろう? からだが出す音にも、よい音とはずかしい音があるのを学ぶたいへんさ。「難聴者」とろう者の境界線上にある人の意識はどう揺れ動くか。
 著者のひとりは生まれつき耳が聞こえず、ひとりは児童期の途中失聴者である。ふたりのろう者が、ろうの生活文化を内側から記述していく。 アメリカでは手話を学ぶ際の必須文献として、教科書としても使われている。