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あとがき
この本の中ではチーズに関する知識や情報をできるだけたくさん読者の方にお伝えしたいとの思いで執筆にかかりました。結果的に教科書的な作りになってしまったと少なからず反省する次第です。本文中で本当に伝えたかったことをあらためてこの項に記します。
唐突ですが、「あなたはチーズが好きですか?」「なぜチーズが好きですか?」「チーズのどこが好きですか?」そして「チーズとどのように付き合っていますか?」
本文中でチーズを楽しむためにと題して文を書き進めましたが、わたしは基本的に食にルールはないと考えています。あなたが好きなように楽しめば良いことです。食とは楽しむためにあるのですから。
食の分野でもよく“素人”という言葉を見聞きします。わたしの嫌いな言葉です。一部の心無い方は「素人にこの味はわからない」とか挙げ句には「素人は黙ってろ」などと言います。愚かしいことです。食は玄人のためにあるとでも思っているのでしょうか? はたまた飲食店や食品店は玄人ばかりが来るとでも思っているのでしょうか?食べることに素人玄人もありません。同じく“通好み”や“初心者向き”の食べ物もありません。食べ物にそんな区別はなく、食を正しく受けとめることのできない人がそんな逃げ道としてこの言葉を使っているような気がします。
これと同様に食を批評したり、順位付けしたがる人たちもいて、中にはそれを生業とする人もいます。彼らこそプロの料理に対して素人であるのにです。さぞ彼らが厨房に立つや、すばらしい料理を作るのでしょうね。
野球解説者なら元野球選手、相撲解説者なら元関取ならまだ納得もできます。食べることは誰だってすることですから、批評しやすいのでしょうか。友達と家族とあれこれ言う分には自由で誰にも迷惑はかかりませんが、公にするのはいただけません。その行為はまるで野球のヘタな、もしくは運動の苦手な人が居間でテレビの野球観戦をしながら選手のプレーや監督の采配に文句をつけているみたいでおかしくなってきます。
チーズの点数をつけたり、チーズ店のランクをつけたりする人たちもいます。まるで世の中、総評論家です。いったいなぜこんなふうにしかチーズを、食をみられないのでしょう。食に、チーズに良いも悪いもありません。もしあるとするならそれを受けとめる人の側の心に問題があると思います。
食は自然の大いなる力と人の汗と涙と、そして心の結晶です。食そのものが尊き文化そのものなのです。それを批評したり順位をつけたりするなど恐れ多いことだとは思いませんか?
わたしはこの本によってチーズという形を借りた、自然の力、そして人の営みを少しでも知っていただきたいと思って書き進めました。けっしてこの本があなたの教科書に終わらず、そしてチーズを評価するためのたんなる手引書とならないことを願って。
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