内田魯庵山脈 「失われた日本人」発掘
山口昌男 六九三〇円
埋もれていた内田魯庵の小篇に、失われた知の原郷が隠されていた──。近代日本の諸学、人類学、考古学、民俗学、美術史……は、学校のようなタテ型でない趣味や遊びに根ざした市井の自由なネットワークに芽吹き、魯庵はその象徴的存在だった。本書は、魯庵を手がかりに、近代日本の知の最良の部分と、粋な日本人たちを壮大な規模で掘り起こす、歴史人類学の達成である。

世の途中から隠されていること 近代日本の記憶
木下直之 三九九〇円
日清戦争のとき広島に建てられた凱旋碑は、そのまま平和塔となっている。女装姿のヤマトタケルのイメージは、実は明治につくられたものだ。私たちが当たり前のことだと思っていることの起源は案外新しい。記念碑、肖像写真、見世物など、歴史に埋もれた物を掘り起こし、日本人の美意識の変遷をたどる。美術からみたもう一つの明治の歴史。

雑読系
坪内祐三 二一〇〇円
「雑読」って? ただ、雑、にんでいく読書なのだ。様々な人が織りなす本の世界に身を投じ、出口なき迷路をさ迷っていく。そんな読書術の持ち主であり、当代一の読み手が、ブラドキーの下関マグロのスタイナーの山田稔のソンタグの杉浦茂のカーヴァーの……それぞれの宇宙にいざなってくれるのである。

今江祥智〔童話術〕 物語ができるまで
今江祥智 二四一五円
物語づくりの手の内大公開。作品のテーマがかたまるまで、文章術と読書法、長編の書き方・短編の書き方、仕事部屋と文房具、ブックトーク、そして気晴らしの工夫──。豊かな実作経験をもとに、一冊の童話や絵本ができるまでのすべてを語りあかす。

読書休日
森まゆみ 一九九五円
本を開く、それが私の自由時間……。読む、書く、雑誌をつくる、と活字を愛してやまない著者が綴る、書物をめぐる豊かな世界。幼い心を揺さぶられた『フランダースの犬』、『ゲーテ恋愛誌集』、そして幸田文『台所のおと』……地域・メディア・文学・ライフスタイルなど多彩なジャングルの愛読書のなかから、とりわけすぐれた百冊余をおすすめする。

実用書の食べ方
岸本葉子 一六八〇円
料理本、冠婚葬祭などのマナー集、こころの問題、ビジネス書など、実用書の世界はじつに奥が深い。エッセイスト、書評者として活躍する岸本葉子さんが、さまざまな実用書を試した、悪戦苦闘の日々をつづる体験エッセイ。実用書の効能をとくとともに、現代人の悩みやコンプレックス、欲望を明らかにする。

印刷に恋して
松田哲夫  イラストレーション 内澤旬子 二七三〇円
編集者松田哲夫さんが、活版、オフセット、特殊印刷など、多彩で多様な印刷の現場をルポルタージュした。マンガが活版でつくられていること。手動写植の仕組み。バーコ印刷の現在。……各現場の職人さんに仕組みや時代背景などを聞き出していく。急速にデジタル化が進む中、出版と印刷はどこへいくのか。印刷技術の基礎と出版業界の未来がわかる最良の入門書。

哲学者クロサキの写真論
黒崎政男 一九九五円
デジタルカメラの出現で、撮った画像データをいかようにも加工できるとすると、決定的瞬間を切り取るという写真本来の意義はどのように変わっていくのか? 技術の進歩に伴い変化する人間の美意識に迫り、まったく新しい写真論を構築する。クラシックカメラからデジカメまで写真の歴史を縦横無尽に駆け抜ける哲学者の勇壮な試み。

ブックストア ニューヨークで最も愛された書店
リン・ティルマン 宮家あゆみ訳 二六二五円
個性的な品揃えと家庭的な雰囲気で、地元住民はもとより多くの文化人たちから親しまれていた書店がニューヨークにあった。ポール・オースター、スーザン・ソンタグらに愛された書店、「ブックス・アンド・カンパニー」の20年間の活動を、書店員や顧客である作家たちの証言をまじえながら振り返るノンフィクション。本を愛するすべての人に捧ぐ。

石神井書林 日録
内堀弘 二一〇〇円
近代詩集専門の古本屋さんがある。東京の石神井に店を構え、いまでは二十年が過ぎた。店売りではない。古書目録を全国に発信し店を営んでいる。宮沢賢治、福永武彦、寺山修司らの残した詩集を追う。表舞台から消え去った無名の詩人たちのことばを発掘するユニークな古本屋さんの日々。

*表記の定価は2003年06月現在のものです。定価、仕様は予告なく変更する場合があります。