不景気が続く。出口なしの状態である。まるで底なし沼だ。政治状況も、相も変わらぬ閉塞状態だ。外交もしかり。私たちはどんな時代を迎えようとしているのか。どのような時代を選択しようとしているのだろうか。
 辛口評論家は、こういう状況だからこそ、自分の原点に向かうことにした。自分の出発点に立つことにした。そんな決意から生まれたのが、この一冊である。
 佐高さんは、小学校六年生の前に立つ。前もって出しておいた宿題は、「世界にはいろいろなお札があるでしょう。そこで、みなさんも、自分のお札を作ってきてほしい」。……三十七人の生徒は、どんなお札を作ってくるのでしょうか。「佐高先生」は、そのお札を素材に、どんな授業をするのでしょうか。
 NHKテレビ番組の「課外授業揮――ようこそ先輩」から自分の出発点への旅が始まるのである。お札って?
 社会って?
 会社って?
 佐高さんは、マスコミから辛口評論家と呼ばれるきっかけとなった、会社批判の原稿にと進んでいく。「先駆的企業批判」である。八十年代に発した「リクルートという会社とは」、「日本経 済新聞に大きく欠けているもの」、「大蔵省VS日銀の暗闘」などが持つ意味を再考するのである。
 さらに、言論人として、ジャーナリズムがいま、置かれた状況に鋭く迫っていくのだ。
 佐高さんの原点に向かう旅は、そのまま私たちが、いまの日本を問う旅でもある。