(第8章より)
 「この半年でわたしすっかり大人になったみたい。去年の夏の胴着のホックがもう止まらないの。ここを開いてごらんなさい。見せてあげるわ、どんな綺麗な体になったか」
 私のほうから求めたのなら、たぶん聞き入れてはくれなかったでしょう、というのはこの調子では今夜の語らいもどうやら恋の一夜にはなりそうもないように思えてきたのです。それでも私は手を出すのを控えました。すると彼女のほうから寄ってきました。
 ああ! 私がふくらんだ胴着を開いてさらけ出した乳房は、まさしく「約束の土地」の果実でした。これほど美しい乳房が他にあるとは、とても考えられません。またこの乳房にしたところで此の夜風情に匹敵するほど素晴しい形にお目にかかったことはそれ以後一度もありません。

 (中略)

 「いかが、わたしの体お気に召して?」
 もう一度私は彼女を抱きしめました。
 「待って、後で」
 「まだ何かあるのかね?」
 「まだそんな気になれないの、それだけよ」
 そして彼女は胴着をもとどおりに閉じてしまいました。