『家蠅とカナリア』『割れたひづめ』などの長篇ミステリで再び注目を集めるヘレン・マクロイは、本格推理からSFまで、幅広いジャンルにまたがる短篇小説の名手でもあった。
 清朝末期の北京を舞台に、ロシア公使夫人の謎めいた失踪事件を異国情緒たっぷりに描いて、名作の誉れ高い「東洋趣味」を筆頭に、女教師の分身が奇怪な事件を引き起こす怪奇ムード満点の「鏡もて見るごとく」、UFOの目撃者が次々に謎の死を遂げる「歌うダイアモンド」、深層心理というテーマに真正面から取り組んだ「カーテンの向こう側」、終末戦争後の世界を淡々と描いて深い感動を呼ぶ「風のない場所」他、〈クイーンの定員〉にも選ばれた名短篇集の珠玉の傑作八篇に、十五年前の冤罪をはらすため帰ってきた男が、再び事件に遭遇する力作中篇「人生はいつも残酷」を併録。