油絵、木炭画、コンピュータ絵画、オブジェやスクラップブック、絵本、バンド活動…。大竹伸朗は、ジャンルや現代美術の固定観念を越え、活躍する芸術家だ。
 そんな彼の頭には、いつでも、ある問いかけが渦巻いている。「芸術」とは何か? 自分を創作へと駆り立てるものは、一体どこからくるのか?  
本書は、二〇〇〇年一一月から約二年間にかけて綴った日記に、展覧会の覚え書きや、心に思い浮かんだ情景などが盛り込まれた一冊。未発表の水彩画やドローイングも多数掲載し、さながらスクラップブックのような楽しさだ。
どの頁にも、刺激的な日常の断片が詰まっている。彼を興奮させる出来事は、日々、思いがけなくやってくるのだ。 
 海辺の干しタコや、ふと目にした路上の藤圭子のポスター、文字の欠けた看板に、創作意欲をかき立てられる。コンピュータと格闘するうち、絵の本質を見いだす。本や雑誌で知った、脱獄王・白鳥由栄と、郵便配達夫シュヴァルの生き方に、「芸術家」の神髄を見る……。
芸術と一見無縁なものにも、真の美はある。その発見が、自作の発想に結びついていく。 
 「『やりつくされた』などと口にするのは人間のおごり」という大竹。その制作の軌跡は、この上なくスリリングだ。