ルネサンスの異教秘儀

エドガー・ウィント 田中英道他訳  六七二九円
ルネサンスの偉大な芸術作品には、目に見える以上の意味がかくされている。ボッティチェルリの『春』にプラトン的な愛の弁証法を読みとり、ミケランジェロの『夜』に、古代の死の理論を発掘する。ヴァールブルク学派の硯学が、その豊かな学植を駆使して、ギリシャ以来の異教の生命力を蘇らせ、ルネサンス芸術を最深部から捉えた書。

本の都市リヨン

宮下志朗 五〇四〇円
フランス、ルネサンス期。ヨーロッパの一大出版センターとして首都パリとしのぎをけずった「大市」の都市リヨン。ラブレーの作品をはじめ、数々の特異な書物を輩出したこの都市は、だが、書物の出現から百年余、歴史の表舞台から突然姿を消す。印刷・出版史上の黄金都市リヨンの興亡をあますところなく描きだした力作一〇〇〇枚。

消えた印刷職人 ジャン=ジル・モンフロワ

宮下志朗訳  一九三八円
宗教戦争の嵐が吹きあれた十六世紀末ヨーロッパ。若くして工房の親方になった腕ききの印刷職人アベルは、美しく奔放な妻を雇い人に寝取られ、遍歴の旅に出る……。本づくりに情熱をもやした男の波乱にみちた生涯を追って、ルネサンスの出版界をいきいきと再現する秀作。「歴史物語が放つ香気。ユーモラスな仕掛け」(朝日新聞評)

世界劇場

フランセス・イエイツ 藤田実訳 三三六〇円
シェイクスピアの地球座をはじめとする、イギリス・エリザベス朝劇場を、古代ローマの「世界劇場」の理念と建築形態を継承した円形劇場として捉え直し、シェイクスピア演劇とその時代の精神史を根底的に書き換えた画期的な書。現代イギリスのルネッサンス精神史研究の第一人者が、積年の研究の成果をまとめた注目の書。

理想の書物

ウィリアム・モリス著 W・S・ピータースン編 川端康雄訳 品切
ウィリアム・モリスは晩年、ケルムスコット・プレスを設立し、みずから理想とする書物の製作にのりだした。その活動の過程で発表された、書物芸術を主題とする論文および講演記録のすべてを集めた貴重な書。本を愛するすべての人に贈る。「モリスを知る上で最も重要な本のひとつである」(東京新聞・柏木博氏評)

ボルヘス怪奇譚集

J・L・ボルヘス A・B・カサレス 柳瀬尚紀訳 一六〇〇円
印度や中国の故事に、アラビヤンナイトの世界に、もちろんカフカやポーの作品に……古今の厖大な典籍を渉猟、その博識博捜のかぎりをつくしてボルヘスが選び抜いた、途轍もない怪談奇談・珍聞異聞九十余篇。「物語の精髄は本書の小品のなかにある」と、ボルヘスみずから折紙をつけた絶好の読物。イラストレーション=小島武

レニ・リーフェンシュタール――20世紀映像論のために

平井正 二四一五円
第三帝国の美神か。最高の映像作家か。オリンピック記録映画『民族の祭典』でナチスドイツの栄誉をになう映画監督となり、戦後もあくなき映像美の追求を続けるレニ。多彩な資料をもとにその生涯と仕事をだどり、美と時代との関わりに迫る力作評論。「現在のコマーシャルやスポーツのありかたを考えるうえでも示唆的な視点」(日本経済新聞評)

美女とは何か ──日中美人の文化史

張競 二五二〇円
古来、美女は世の憧れを誘う一方で、男の運命を狂わす悪女であり、亡国の元凶であり、女神、幽霊、異人、薄幸、世の移ろいのたとえであった。また、文化によって時代によって、美人観は大きく変化する。美人は文学や絵画のなかでどのように描かれ、いかにイメージが形成され、機能したのだろうか。東アジアにおける美女と美貌に関する比較文化史の決定版。

爆心地の芸術

椹木野衣 二九四〇円
日本の「現代美術」が急速に変貌している。「現代美術」をリセットする試みの「日本ゼロ年」展、村上隆の「スーパーフラット」、奈良美智ブーム、横浜トリエンナーレ、NYでのテロなどの現象を受け、ゲーム、アニメ、格闘技などを横断しつつ展開される美術評論。

世の途中から隠されていること

木下直之 三九九〇円
日清戦争のとき広島に建てられた凱旋碑は、そのまま平和塔となっている。女装姿のヤマトタケルのイメージは、実は明治につくられたものだ。私たちが当たり前のことだと思っていることの起源は案外新しい。記念碑、肖像写真、見世物など、歴史に埋もれた物を掘り起こし、日本人の美意識の変遷をたどる。美術からみたもう一つの明治の歴史。

*表記の定価は2002年11月現在のものです。定価、仕様は予告なく変更する場合があります。