デパートのウインドウなどで、マネキン人形の美しさにドキッとしたことはありませんか。
 国籍不明、モデル不詳、親しみのもてるイイ感じだけど、はたしてこんな女性がいるものか――。世につれ人につれ、好まれる顔や体型は変化します。時代が憧れる女性像を、鏡のように映し出すのがマネキンなのです。
 本書は、マネキン作り四五年、斯界トップを行く原型作家が、戦後のマネキンの歩みとその魅力を伝える一冊です
 そもそもマネキンは服を売るためにあります。服を着ることを運命づけられた裸身として、マネキンの原型は人体彫刻のプロによって一点ずつ手作りされるのです。
大正期芸術運動を背景に京都で誕生した「島津マネキン」、製作現場から見た女性美の変遷、目を開いたまま全身型取りをする技術、サンローランやシャネルのオリジナル・マネキン制作秘話……。本書は、「裏ファッション史」でもあります。
 不況になると街からマネキンが減り、画一的なヘッドレスのヒトガタが増えるけれど、今ふたたび、人体の魅力に注目が集まり、新しいマネキンが続々と誕生しているそうです。
マネキンは消耗品であるため、歴史上貴重な作品でも現物が残っていないことが多く、写真図版も必見です。