二〇〇二年、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を『千と千尋の神隠し』と同時受賞し、スティーブン・スピルバーグによって全世界公開が予定されているアニメーション映画『千年女優』。その発想の面白さとスケールの大きさで周囲を驚かせた監督の今敏氏は、ポスト宮崎駿、ポスト押井守世代のアニメーションの旗手としていま最も注目を集める人物。

 その今氏が、第一監督作品である『パーフェクト・ブルー』も含め、アニメ映画制作にまつわるさまざまなエピソードについて語った、第一エッセイ集が本書。

 「残された道はいかに死者を出さずに逃げ切るかの退却戦である。腕の一本足の一本なくなっても死ななければいい。極端な話“面白さ”という殿様さえ生き残ればそれで良い。カット内容を削ってでもフィルムにせねばならない。」

 制作現場の壮絶な舞台裏、大爆笑もののエピソードにからめて、日常の観察眼の培い方からもの作りの姿勢までをシニカルに、そしてコミカルに語った本書は、アニメファンのみならず、すべてのクリエイター志望者必読の書だと言える。

 彼自身のWebサイト"KON'S TONE"に掲載された文章を中心に、書き下ろし、語り下ろしも加え、文章による展開された“今敏ワールド”。