いまや日本でも「ソムリエ」という言葉は、広く一般に知れわたり、ソムリエを目指す人たちもふえている。
 ワインの品種や銘柄を当てるのが、ソムリエの仕事ではない。客の食べたいものに合わせて、どんなワインを選ぶか、飲みたいワインにどんな料理をすすめるのか、客に対して「本物のサービス」を提供するのが本来の役割だ。
 著者の細川布久子さんは、作家の開高健にワインの手ほどきを受けたことがきっかけでワインの奥深さにふれ、やがて渡仏を決意する。その後、フランス・ソムリエ協会などで勉強をつづけ、権威あるワインコンクールで優勝するまでになった。
 17年にわたってパリに暮らし、ワイン修業をつむなかで出会ったソムリエたち。本書では、その中から7人を選び、ソムリエという仕事の真価と意味、ワインと料理とサービスで成り立つフランス料理の世界、レストラン文化の奥深さについて考えていく。
 華やかな食の世界を、陰で支える人たちから見つめた、もうひとつの食文化誌。