いま最も注目を集めている評論家・坪内祐三の評論集である。
 一九七〇年代初め、遅く登場してきた「若者の教祖」植草甚一。時に六〇歳であった。なぜ、若者に受けたのか。この問いに向き合うことで、いまの状況を語る(「植草甚一的なるものをめぐって」)。江藤淳と福田恆在が語った保守性に耳を傾け、現在におけるその意味性を説き(「江藤淳と福田恆在」)、村上春樹が「風の歌を聴け」を発表し、椎名誠の初の単行本『さらば国分寺書店のオババ』が、柄谷行人の『反文学論』が刊行されたのは、一九七九年であった。なぜ、この年に重なったのか。この年を境に文学はどう変ってきたのか(「一九七九年のバニシング・ポイント」)など、八本の評論が収められている。
 圧巻なのは、著者が大学時代に書き上げた「福田恆存論」である。坪内祐三の〃原石〃が読める!