日本の「現代美術」が急速に変貌している。「現代美術」をリセットする試みとして椹木野衣氏がキュレーションを行った水戸芸術館の企画展「日本ゼロ年」がひとつのきっかけとなり、村上隆の提唱するコンセプト「スーパーフラット」、奈良美智ブーム、美術界のイベントとしては空前の入場者数を記録した横浜トリエンナーレなどの現象が、その変貌を示唆する。いま、日本の「現代美術」の変貌を読み解くには、三つの〈爆心地〉に向かいあわなければならない。その三つの〈爆心地〉とは何か? ニューヨークの同時多発テロ事件を受け、ゲーム、アニメ、格闘技などの世界を横断しつつ展開されるスリリングな美術評論。
 椹木野衣氏は、反=日本現代美術史とも言うべき『日本・現代・美術』で、藤田嗣治、岡本太郎、赤瀬川原平から森村泰昌、村上隆まで、戦後美術の主要な作品・批評を軸に、日本文化を大胆に解読してみせた。その『日本・現代・美術』の続編に位置づけられる本書について、椹木氏は次のように語っている。
 「この本がきっかけとなって、映画や小説、さらにはゲームやアニメといったサブカルチャーの世界で、本来であればもっと論じられてよい可能性が、現行の批評的抑圧の中で芽をつまれてしまっている状況に対して、美術の世界で培われた批評のことばで介入し、一気に可能性を広げられる、そんな本ができればと考えています」