コンプレックス、強迫神経症、パニック障害、境界例、ひきこもり……心についての不安をみんなが抱えて生きている時代。「私ってうつ病なのかしら?」といった症例にかんすることから、「人と会うのが怖い」「何に対してもやる気がおきない」といった漠然とした悩みまで、心にかんする不安はさまざまなレベルである。
さらに、事件が起こるたびにテレビや新聞で伝えられる「識者」のコメントが不安に拍車をかける。「犯人は分裂病の傾向があり……」といった、直接の診断抜きに行われるレッテル張りが、「もしかしたら私も」といった不安や、他人に対する偏見や曲解を増長させてはいないか。
 問題は、こうした心の病についての正確な知識が現時点で十分伝えられていなことだ。「一般の人にも、心についての基本的な知識や病気について、わかりやすく伝えたい。そういう知識が伝われば、みんなもっと生きやすくなる」。そんな確信のもと、「心の時代」を象徴するさまざまなキーワードについて、心の問題の専門家・香山リカがかみくだいて解説する香山版心のキーワード集が本書。
 同時多発テロ事件が起きたりで世界が大変な状況になっても、普通の人が必要としている精神医学や心理学の知識、治療法などは変わらない。世界がどんなになろうとも、明日元気に生きていくために読んでもらいたい、悩める人々に贈るキーワード集。