鍛冶屋がいなくなった。 石屋がいなくなった。 木挽きがいなくなった。 筏師がいなくなった。 職人の仕事が日本から消えた。 この本の著者、塩野米松氏は、日本各地の職人たちをたずね、長く聞き書きを続けてきた。消えたものは戻らないが、いまならその記憶を書いておくことができるからだ。 その塩野氏がイギリスを旅し、八人の職人に話を聞いた。 ビヤ樽づくり。ホウキ職人。クギの鍛冶師。フクゴ職人。網代舟づくり。バスケット編み職人。屋根葺き師。町の鍛冶屋。 若い日の修業。道具のあつかい、ものができたときの喜び、など、どこも変わらない職人気質もある。しかし、まったく違っていることもある。 この本を読んでいると、イギリスの田舎で、職人たちの話に耳を傾けているような気がしてくる。