まえがき --小説を「理解」する

 1 ずっと読んでいたい本
年齢七十二歳、体重五十二キロ 幸田文『崩れ』
親愛なるわが病 吉行淳之介『目玉』
お葉に始まる──藤沢周平の女たち『暗殺の年輪』ほか
二つの伝記 藤沢周平『一茶』『白き瓶』
「農」のこころ 藤沢周平『漆の実のみのる国』
三島由紀夫と少年 『雨のなかの噴水』『真夏の死』ほか
干刈あがたのけなげさ 『ウォークin チャコールグレイ』ほか
過去と現在の逃亡者 丸谷才一『笹まくら』

 2 思い出の本 忘れられない作家
底冷えのする暗さ 野口冨士男『徳田秋聲傳』『わが荷風』ほか
風景の向こうにある東京 野田宇太郎『東京ハイカラ散歩』
不安な町歩き 『檸檬』
火山に死す 宮澤賢治『グスコーブドリの伝記』ほか
食は小島にあり 小島政二郎『食いしん坊』
尾崎一雄をのんびりと 『暢気眼鏡』『虫のいろいろ』ほか
一瞬の日のかげり 山川方夫『夏の葬列』
永遠の少女が見た恋愛 野溝七生子『アルスのノート』
林芙美子の暗い戦後 『放浪記』ほか
 
 3 新しい小説
小さいけれど好きなもの 江國香織『つめたいよるに』
壺のなかのもうひとつの世界 筒井康隆『敵』
父を殺した少年のおびえ 柳美里『ゴールドラッシュ』
孤高の強さ 車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』
孤高な青年の精神の彷徨 丸山健二『いつか海の底に』
身体は自己主張する 河野多恵子『赤い脣 黒い髪』
祈るように言葉を探る 村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』
弱々しく病んだ戦後の「美しい風景」 久世光彦『謎の母』
文体という美 久世光彦『蕭々館日録』

 4 ときには小説以外の本も
笑いとアクション 花田清輝『新編映画的思考』
まがったことの好きな批評家 花田清輝『恥部の思想』
場末の酒仙 種村季弘『食物読本』
骨董と文学のあいだ 青柳いづみこ『青柳瑞穂の生涯』
生きている日々の呼吸としての言葉 柳美里『窓のある書店から』
定住のひと 飯田龍太ほか『尊魚堂主人──井伏さんを偲ぶ』
詩の生まれるところ 荒川洋治『夜のある町で』

 5 大江健三郎を読む
「洪水のあと」のユートピア 『洪水はわが魂に及び』
空中に浮かぶアグイーを求めて 『空の怪物アグイー』
「子ども」ということ 『小説のたくらみ 知の楽しみ』
「存在しない神」に祈る 『燃え上がる緑の木』
芸術家の自死と再生 『取り替え子(チェンジリング)』
「自分の木」を探し続ける 『大江健三郎・再発見』 『「自分の木」の下で』
 
あとがき
初出一覧