こんどの津野さんの本にはいろんな人が登場する。 今江祥智。片岡義男。植草甚一。久保覚。羽仁もと子。淀川長治。瀬田貞二。…… 児童文学者として、小説家として、映画評論家として知られているが、じつは、彼らには共通点がある。みんな編集者だということだ。 本や雑誌をつくっていたというだけではない。その仕事を編集という行為と切り離すことのできない人たちだ。 どういう人か。 著者は「おせっかい焼き」だという。思いきり厳格にいえば、「じぶん以外の人間がもつ力にひかれ、そこにじぶんの力を合流させたいという欲求」をもっている人だということになる。 そう、この本は編集者列伝でもある。編集人間たちの仕事をていねいにひろいあげ、彼らが心血をそそいだ本の活力をもういちど見直してみようと語りかけているようだ。いたずらに本の危機を叫びたてるのではなく。 じつは津野さん自身がそういう人なのである。 この本のなかで、四十年前駆け出しの編集者だった頃の思い出にふれて、こんなことを書いている。「私は今日にいたるまで、編集というのはいくつかの基本的な知識さえあれば、どんな人間にでもこなせるアマチュア仕事なのだという思いこみから抜けだせずにいる」 どうやら編集とは技術や職能ではなくて、生きかたらしいのだ。