チェルノブイリ原発事故が近隣国ベラルーシの子どもたちにもたらした甲状腺ガンという大きな悲劇。 菅谷昭医師が放射能に汚染された被災地に飛びこんだのは九六年一月のことだった。 そして、最初の二年間の医療活動をレポートしたのが『チェルノブイリ診療記』(五刷/一九九五円)。中学生から幅広い世代に読まれ、大きな反響をよんだ。 本書は、その第二弾。現地へ発つ日より帰国までの五年半にわたる活動をつぶさに記録した菅谷医師の日記だ。 高汚染地にある病院で、手術にあたるほか、現地若手医師の育成、集団検診、家庭訪問など、医療援助をつづけた。また、帰国した後も医療支援を継続するため、「チェルノブイリ医療基金ベラルーシ事務所」も開設した。 医療環境だけではなく、インフレに悩む国の食料事情、厳しい気候、治安問題、楽しくもつらいロシア式宴会、子ども民族舞踊団との交流……日記だからこそ、よりリアルに「チェルノブイリの真実」がみえてくる。 菅谷医師にとって、奉仕精神や慈善活動ではなく、すべては自分の生きがいのためだという。これは、自分のため、そして社会のために考え、実践したひとりの日本人医師の「いのちの記録」なのだ。