あたらしいリュックサック

 毎週、土曜日になると、うんざり。ショッピング・センター「メガ・ストア」に買いものにいく。
 かんづめがダンボールばこにどっさり、山のようなトイレットペーパー、うんざりするほどのパスタ……。「ぜーんぶカートにつっこんで、なにがたのしいのよ」サラは、家にかえるとちゅう、車の中でぶつぶついっている。

 とくに今日は、いつもにもまして、さんざんだったの!
 サラは、出かけるまえに「あたらしいリュックサック買っていい?」ときいた。
 お母さんは、いそがしそうに「そうねぇ……」としかいわなかった。
 「そうねぇ」というのは、買っていいよという意味だとサラは思った。だからこそ、今日は大きなショッピング・センターの中であっちの階、こっちの階とつれまわされても、「足がいたい」とも「もう、テレビはじまっちゃうよ」ともいわずにがまんしたのだ。

 そして、ようやく学用品売りばにやってきた。わーい。あったあった。これが、ほしかったリュックサック。ピンク色でハート型のポケットがついてるの!

 ところが、わくわくしながら、買いものカートにいれたとたん、お父さんにとめられた。
 「売りばにもどしなさい!」
 「どうして? これ、いるんだもん。必要なの!」
 「あたらしいリュックが必要ですって? 去年買ってあげたのがあるじゃない」
 「だって、お母さん。あのアップル・グリーンのは、パジャマのクマさんがついていて子どもっぽいんだもの。わたし、もう大きいんだから、あんなのはずかしい!」
 「でも、あれがほしい、あれでなきゃいやって大さわぎしたのはあなたでしょう?」
 「そんなのずっとまえのことじゃない……」
 「サラ! おまえは、あたらしいのがほしいだけだろう。どうしても必要だなんていいかたをするのはやめなさい」

 サラは、大声で泣いた。おねがいした。おこった。でも、どうしようもない。
 お母さんは、サラの手をぐいぐいひっぱって車にもどった。シートベルトにしばりつけられても、サラはシートにみをしずめて泣きつづけた。

 月曜日、学校にいったら、また、あのかばんのことでステファンにからかわれるんだ。ひどい! お父さんとお母さんのせいだ!
 「じゃぁ、こんどのおたんじょうびに、あのリュックサックを買ってあげる」
 お母さんの声がさっきよりやさしくなった。
 「あと1か月もしないうちにたんじょうびじゃないか、なっ」
バック・ミラーにうつったお父さんの目がウィンクする。
 「たんじょうび? たんじょうびには、インラインスケートがほしいの! ジョエルおじさんと夏休にあそぶんだから。どうしても必要なの!」