ベンヤミンの黒い鞄 ──亡命の記録
リーザ・フィトコ 野村美紀子訳  三九七五円
ピレネーを越えれば自由がある……。第二次大戦下、ナチスから逃がれる亡命者の中にW・ベンヤミンの姿があった。不幸な結末を迎えた彼の亡命の際、山越えの案内をした一人のユダヤ人女性が、自らの亡命の途上で出会った様々な場面を鮮明に回想する。H・アーレントらとの収容所脱走など冒険小説さながらの日々。歴史の空白をうめる記録。

投書狂グレアム・グリーン

クリストファー・ホートリー編 新井潤美訳 定価三五七〇円
20世紀英国を代表する作家グレアム・グリーンは、つねに時代に物申す「投書の人」 だった。ベトナム戦争やキューバ革命。猥雑表現や印税・誤植など出版にまつわる話。死ぬ権利や避妊について。天気予報・郵便への不満。ペットについて ……。世界情勢から日常茶飯まで、45年にわたる新聞・雑誌への辛辣にしてユーモアあふれる投書を集成。投書というジャーナリズムによるもう一つの20世紀の証言。

ヨーロッパ半島
エンツェンスベルガー 石黒英男他訳 定価四八九三円
統一ヨーロッパなど幻想にすぎない。スウェーデン、ポーランド、ハンガリアなど七つの国を歩き、ヨーロッパの生きのびる道を探る。「ヨーロッパは、いまドラマである。西独の詩人にして批評家、才気煥発なエンツェンスベルガーが『願望のヨーロッパ』を探るこの大規模なルポルタージュは、刺激的な言辞で一杯だ」(日本経済新聞)

暗号名はメアリ ナチス時代のウィーン
ガーディナー 小池・四條訳 定価二八五四円
映画『ジュリア』のモデルと言われ、1930年代ウィーンの反ナチス運動に身を投じたひとりの女。コルセットに偽造パスポートをしのばせ、すりぬける検問。亡命者を匿い、隠れ家を提供する――。緊張した日々を自ら綴る。序文=アンナ・フロイト。

ケンブリッジのエリートたち
ディーコン 橋口稔訳 定価三二六二円
英国の名門ケンブリッジ大学に、1820年代、12人のメンバーによって創立され、今日までつづく「使徒会」という秘密会がある。テニスン、ラッセル、ヴィトゲンシュタイン、ケインズ、E・M・フォスター……世界最高の知識人が集ったこの会の謎の足跡を追う。

スコットランド・ヤード物語
内藤弘 定価二三四五円
世界最初の近代警察、ロンドン警視庁(通称スコットランド・ヤード)は、犯罪者うごめく19世紀初頭のロンドンに誕生した。巡査たちの仕事ぶりや組織のしくみ、シャーロック・ホームズ譚に隠れたエピソードなど、知られざる歴史を浮き彫りにする渾身の研究。

革命のペテルブルグ

シクロフスキー 水野忠夫訳 一八一四円
ツァーリの十九世紀から革命の二〇世紀に向けて燃えるペテルブルグ。ロシアの未来を告知するためにやってきた人々、トルストイ、レーニン、ゴーリキー、マヤコフスキー、パステルナーク。たった一度しかなかった真実のロシア革命を求めて、彼らの痛切な叫びを生き生きと再現するロシア・フォルマリズムの総帥シクロフスキーの感動的な回想。

ナショナリズムの生命力
アントニー・D・スミス 高柳先男訳 二九四〇円
冷戦の終結とともに、民族や宗教の対立から発する紛争が世界中で噴出している。政治的イデオロギーとして利用され、人々を破壊的な行動へと駆り立てるナショナリズムの相貌を、人々の文化的な集合意識の形成過程から歴史的に跡づけた新世紀の指標。 「グローバル化、情報化、EU統合などの今日的な問題点を教えられる」(日経新聞評)

政治と犯罪
H・M・エンツェンスベルガー 野村修訳 一七九四円
アル・カポネからロシア・アナーキストにいたる犯罪者と犯罪組織の詳細な記録と鋭い分析によって、国家そのものの犯罪的本質を衝く。戦後ドイツを代表する若き詩人思想家の徹底的な反ブルジョア的知性と軽快な想像力に支えられた野心的な長篇評論。「これほどの本にはたまにしか出会えない」(朝日新聞評)

シルクロード・キャラバン
アンヌ・フィリップ 吉田花子・朝倉剛訳 二四一六円
切りたつ峰を馬を連ねて進むキャラバンのリズム。様々な文化を生きる異郷の民との出会い。俳優ジェラール・フィリップ未亡人としても知られる作者が、一九四八年、革命前夜の中国シルクロードを旅した記録。「荒々しい自然を的確に描きながら、そこに住む人たちを温かい目で見ている」(朝日新聞、常盤新平氏評)。〔対談〕鶴見俊輔・長田弘


*表記の定価は2001年6
月現在のものです。定価、仕様は予告なく変更する場合があります。