目次

プロローグ
地に響く唄声
ひとつ唄ってみようか……老人は、小さな、しかしよく通る声で唄いはじめた。


第一章
東京ベイブルース
わずかではあるが、昔の木場につながる光景はこうして生きている。


第二章
御神木の里
かつての木馬引きも、こうやって熱気と迫力とともに動かされていたはずである。


第三章
老山師の記憶
「昭和三十年ごろかな、仕事のやり方がまったく違うてきたのよ。うん、機械化やね」


第四章
山の現場にて
転げ落ちそうになるたびに、手近な草々につかまる。……すでに手の甲には無数の引っ掻き傷がついている。勢いよく山道を駆け上がったときの元気はとうに消え失せていた。


第五章
林「業」とはなにか?
「山持ちで暮らせるゆうのは、相当に大きな山持ちじゃなきゃ無理なんです」


第六章
隻腕の育林家
材として出せるまでどれぐらいかかりますか、と問うと、七十年かなあ、などと平気な顔で言う。ワシがいなくなっても木は残る、林業とはそんなもんだ、と。


第七章
川の上流には
人が交わることで、唄が交わる。当然そのときに技術も交わっているはずである。……もう一度、私は起点の東京に舞い戻ってみた。地図を広げ、眺めてみる。


第八章
炭焼きを訪ねて
北海道、東京、和歌山、そして島根……いくつもの山に分け入り、煙たなびく炭焼きの小屋を訪れた。木々と人間とが直に触れ合い、言葉を交わすようにして付き合う姿があった。

第九章
古き林業の里
今も山の神を祀る風習はつづいている。……モミの御神木のすぐ横に、先の台風で根から倒れたスギの巨木があった。樹齢二百年ほどである。これも自然の摂理でしかないのか。


第十章
広島の山師たち
「こんな声じゃ力出ないのさ。もっと怒鳴るような大声じゃないと、周りに聞こえないし、木は上がらんよ。そして、木遣りの上手な人が音頭とらんと、仕事はつづかんな」


第十一章
生きる修羅
山に踏みとどまりつづけた者たちは、都会人の喜びそうな感傷とは無縁に生きてきたし、今もなお生きているのである。知恵と体力を振りしぼって──


第十二章
北の森林
唄の節は、以前アイヌの老人から聞いたものとほぼ同じである。そして、文句のほうは京都で聞いたものと同じであった。そのことに驚かされた。唄が、各地を駆け巡っている。


エピローグ
失われた唄の向こうに
戦後五十年余りの間に、じつに多くのものや、ことを急激に変革してきた。ひたすら歩み、走りつづけ……そして、いま、私たちは──


あとがき

主要参考文献