トリックスター
R・ラディン他 皆河宗一他訳 二九四〇円
トリックスターとは、その自由奔放な行為ですべての価値をかきまわす神話的いたずら者である。本書はアメリカインディアンに語りつがれるトリックスター物語を人類学者ラディンが収集、ケレーニイ、ユングによる神話学的・心理学的分析を付し、多彩な知性の協力によってトリックスター像の解明を試みる独創的な書である。解説 山口昌男

数の悪魔  算数・数学が楽しくなる12夜

H・M・エンツェンスベルガー 丘沢静也訳 二九八二円
数の悪魔が、算数・数学ぎらいを治します!ロバート少年の夢の中レッスンが始まる。先生は「数の悪魔」という奇妙な老人。数学なんか恐くない。先生が魔法のステッキを一振りすれば、数の法則が目からウロコが落ちるようにわかるのだ。素数の謎。パスカルの三角形。累乗と平方根。順列と組合せ。数の悪魔と少年が、数の世界を楽しくします。

ヨーロッパ半島
H・M・エンツェンスベルガー 石黒英男他訳 四八九三円
統一ヨーロッパなど幻想にすぎない。スウェーデン、ポーランド、ハンガリアなど七つの国を歩き、ヨーロッパの生きのびる道を探る。「ヨーロッパは、いまドラマである。西独の詩人にして批評家、才気煥発なエンツェンスベルガーが『願望のヨーロッパ』を探るこの大規模なルポルタージュは、刺激的な言辞で一杯だ」(日本経済新聞)

ドイツの人びと
W・ベンヤミン 丘沢静也訳 一九三七円
ゲーテやグリム兄弟の手紙、カントやニーチェに宛てられた手紙など、十八世紀末から十九世紀末までの百年間におよぶ有名無名のドイツの人々の手紙25通を公開、その一通ごとに極めてユニークな読み方を付した、ベンヤミンの知られざる名著。ナチスの手によって地下にもぐったドイツ精神の相貌を鋭く掘りおこす。

別れてきた恋人への手紙
ダーチャ・マライーニ 望月紀子訳 二六二五円
浜辺の町に一人暮らす女性作家が、マリーナ=「浜辺」という名の恋人に綴った、投函されることのない78通の手紙。父に恋焦がれた少女のころ。寄宿舎での性のめざめ。不実な男たちとの恋。年上の夫への満たされぬ思慕。そして女たちとの関係……。作家がたどるひと夏の心の遍歴から、さまざまな愛と性のかたちを問いなおす、喚起力ある秀作。

アウトサイド
マルグリット・デュラス 佐藤和生訳 二七三〇円
情熱の作家デュラスは創作の合間に「外の世界」を見つめ、未知との出会いに刺激を受けた。パリの裏町の無名の人々。三面記事をにぎわす男女の愛の狂気。犯罪者の真実……。女優バルドーやジャンヌ・モローの肖像。子どもたちへの宇宙をめぐる聞書。『愛人』に結実したインドシナ時代の回想など。デュラス文学の秘密をあかす27篇の名エッセイ。

ハンナ・アーレント伝

エリザベス・ヤング=ブルーエル著
荒川幾男/原一子/本間直子/宮内寿子訳  6930円
革命と戦争、全体主義が吹き荒れた時代のなかで、公共性と人間の自由を問いつづけた政治哲学者ハンナ・アーレント(1960-75)。未発表を含む膨大な資料、可能なかぎりの関係者へのインタヴューをもとに、アーレントの全体像に迫る決定版評伝。ハイデッガー、ヤスパース、ブレヒト、ベンヤミン、ショーレム、ブロッホなど著名な人物が登場し、20世紀の迫真のドラマが展開する。「彼女の著作を読むよりもその思想がわかる」と絶賛された待望の翻訳。

秋のホテル
アニータ・ブルックナー 小野寺健訳 一五八〇円
秋。スイス。ジュネーブ湖畔に立つ「ホテル・デュ・ラック」。女性作家イーディス・ホウプは、イギリスを追われるようにシーズンオフのこのホテルへやってきた現代の愛のかたちを真摯に探りつづける女の孤独な心理を、硬質な美しい文章で描くブッカー賞受賞の話題作。イギリスで今もっとも注目を集めるブルックナーの物語世界を初紹介する。

五重奏
アンヌ・フィリップ 吉田花子訳 一九三七円
パリのアパルトマンに猫と暮らす女教師のアニエス。向かいの部屋に越してきた一家とやがて親しくなった彼女は、彼らの人生の痛みの時をともに過ごしながら追憶に心を揺らす。一家の夫は、ピアニストの若い娘と恋に落ち、妻は、苦しみながらも男を愛しつづける。両親の葛藤を受けとめる多感な息子。心の結びつきと癒しとを描いた静謐な物語。

三文オペラに恋して
エレーヌ・ファインスタイン 池田香代子訳 二四一五円
1920年代、ナチス台頭前夜のベルリン。キャバレーのウェイトレス、フリーダは、詩人・劇作家のブレヒトに出会う。女は身体からわき上がる思いをステージで歌い、男は腐敗する社会への怒りを演劇にたくした。モスクワ、ニューヨーク、東ベルリン……戦争と政治の嵐が吹き荒れた時代、ブレヒトとかかわり生きた女性の生涯を描くモデル小説。

*表記の定価は2001年2月現在のものです。定価、仕様は予告なく変更する場合があります。