? 魯庵の時空

1 その始まり 15
失われた知の原郷を訪ねて 「杏の落ちる音」
女の肉の告白 江戸の残り香を嗅ぐ

2 明治の逸人――西沢仙湖
滑稽雑誌『團團珍聞』 一人一品の会 『仙湖随筆』
江戸前通人のデカダンス

3 野のアカデミー――「集古会」
逸民の気分 集古会の成り立ち 江戸派と考古派
ヒエラルキーを脱け出る学問

4 和綴の雑誌―― 『集古』
集古会の人々 柳田国男と『集古』 博物館ひとつ分の出品
耽奇会――神話的原型 文明国には遊民あり

5 蒐集家の筆頭―― 林若樹
原稿料など知らない 若樹が寄稿したメディア
輪講雑誌『彗星』 読書家 珍奇図書の蒐集

6 人類学の祖にして趣味の人―― 坪井正五郎
心性の人類学へ 「もの」の学問
日本先住民「コロボックル」説 玩具に熱中

7 精神の系譜を捏造する―― フレデリック・スタール
松浦武四郎の一畳敷 徳川頼倫と南葵文庫 お札博士
スタールの通訳 ICU―多摩墓地―富士山
魯庵にアフリカの話をしたならば

8 神田の玩具博士―― 清水晴風
オモチャの画 課題を設けて展示会
玩具にあらわれる人情風俗 涅槃之碑

9 江戸百科全書派の美校教授―― 竹内久一
岡倉天心の理想を具体化 提灯屋の息子 奈良に遊学
骨董から博物誌へ 神田を拠点にした国柱会
親友に母を託す

10 三村竹清の日記
百四十五冊の日記 川喜田半泥子の風流
幸田成友が語る大阪の裏文化 石井研堂の話
意外な人物が登場する日記の面白さ

11 古本屋の二階で
古本屋という匿れ里 玉屑会 文行堂
史学に専心した旧軍人 古本屋と著作家

12 労働運動と銀座・箱館屋の頃―― 横山源之助
文学のブの字も語らず 『日本之下層社会』
旧幕臣のキリスト者 アイヌの現状、労働者の身上

13 ヤマトノフになった日本人―― 橘耕斎
『ヤマトノフ一代記』 日露辞典『和魯通言比考』
大槻文彦の垂涎 魯庵のロシアへの関心

14 現代に背馳せよ―― 大槻磐渓・如電・文彦
大震災から持ち出した『洋楽年表』 仙台藩の佐幕派家臣
学の幻視者シャーマンの漢詩人 成島柳北の碑文をめぐる大喧嘩
ふと立ち上がって久米舞 山本東次郎の狂言
我が文庫は日本の宝庫なり

15 本と物への執着の話―― 沼波瓊音
徘書コレクションの仲間 芭蕉の木像 国文学から国士に

16「天下未出の珍書」をめぐって―― 井上通泰
内田君、僕が井上だ 穂井田忠友『高根おろし』
某大人の秘蔵の筐底より 歌学を学ぶ開業医
詩材は宇宙より求むべく

17 図書の通人の交わり―― 市島春城
伝記の型を破った『随筆頼山陽』 小説より随筆
図書館協会総裁・徳川頼倫 徳川一門の徳 ミニ書斎に豆本
情報性の高い随筆 百道楽

 ? 魯庵の星座

18  地方を結ぶ「いもづる」ネットワーク
無料趣味雑誌 大正アバンギャルドの「いも仲間」
趣味に研究は必要か? 身近な現象をテーマに
一人一党のネットワーク 市史に花柳風俗を
開戦ひと月前の最終号

19  「いもづる」に集まった人びと
「田舎魯庵」富士崎放江 趣味塚の建立
不可視になった〈いもづる〉の知

20  ハイブラウ魯庵の敗北―― 三田平凡寺
スッポン平凡寺にからまれた魯庵 我楽他宗・趣味山平凡寺
皮肉と揶揄 レーモンド邸訪問 淡島寒月と二人の弟子

21  大正の現実と国際的知を繋ぐ力―― アントニン・レーモンド
東京クラブ 星一との出会い キャンパスの建築デザイン
高崎にて

22  尋常小学校分教場の趣味宇宙――板 祐生
月給五〇円の大コレクター 因伯玩具の紹介
物を通してつくる精神のパイプ

23 江戸の頽廃美と世紀末西欧は出会ったか――永井荷風
西園寺公望の文学趣味 天明の趣味を体現 廃り者の真骨頂
荷風と魯庵を繋ぐ絆 雑踏クロスロードの社会学
終電車に乗り遅れつづけた生涯

24 広瀬千香の見た「星座」―― 『共古ノート』より
大正の翔ぶ女 荷風と箒葉 『書物往来』の消長
古書組合へ入会して資料探求 人間関係を軸に進展する文化
『共古日録』 宮田直次郎・暢親子 牧師・山中共古
随筆とスクラップ的日記の近似

25 魯庵が愛した無垢イノセント――平子鐸嶺
法隆寺再建説への疑問 百万塔コレクションが結ぶ友
鬼気せまる駄洒落 日本美術史を大成する目的

 ? 魯庵の言葉

26 『バクダン』を読む―― 文化史家魯庵
バクダン話 榎本武揚の獄中生活 中根香亭の遺骨
葬儀の芝居性 悪魔払い 正月改善 画料について
社会主義者の文人 素人の写真 早取写真 魯庵の写真術論

27 奇キューリオの人類学
日本の比較文化 蒐集という行為 蒐集を通して奇に達する
農民芸術とインカの壺 野蛮人の芸術 魯庵の建築論

28  未来派・戦争画批評
芸術の予知能力 時間を空間に持ち込んだ未来派
東郷青児と日比谷美術館
二十世紀の戦争を描くネヴィンソン 日本の戦争画
ヴォーティシスト集団

29 広告・ポスター考
ポスターは宣伝の馬印 広告の元祖は市中呼声ストリートクライ 新聞広告
ポスターの起源 日本は蒐集後進国 戦争とポスター
複製芸術論を予見

30 広告の現在と近い未来
奥野他見男『ハルピン夜話』 ユーモア小説を量産
生きた広告の作り方 ヨイショのスタイル
広告欄は紙上大百貨店 イメージとパフォーマンスの広告

31 魯庵の「新しい女」論
因襲について 転換期の女性論 自覚せよ若き女!
夢二の女、須磨子のノラ 欧化熱はおさんどんまで
学問の底の浅さ

32 「青鞜」運動、きのうの夢
雷鳥とウォルストンクラフト スレール婦人のサロン
西欧に甘い魯庵 女性雑誌低劣論
無名のモダンガールたちの女性論へ

33 「本屋風情」遺文
魯庵の読書法 岡書院の出版物 一出版人への対応
柳田国男の折口信夫いじめ 性と趣味の民俗学を嫌った柳田
北海道出身では民俗学は無理だね
『金枝篇』を出版するなら妨害する

34 桁をはずれた彗星――最期の魯庵
若い本好きの友人 魯庵「モダーンを語る」
日本人は思想的に恐るべき民族ではない
面目躍如たる自嘲の一語 随筆文学の復興

35  亜細亜図書館建設の理想
新進翻訳家・衛藤利夫 満州図書館史
奉天図書館――東亜文献の一大集積所 図書の分類
学芸員的司書の必要 アジア研究の場として

36  友人たちの追悼
益友・木村毅 モデルとあてこすり 『罪と罰』の翻訳
多面性ゆえに 魯庵の葬儀


 37  結びに――切れることのない糸

 世界の風流相場を狂わせたい 
 子育て地蔵が疝気の治療をする世の中
 書物と人の蒐集家 コラージュの同時代性



 
 

 主要参考文献
 人名索引