はじめに 
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 活字の周辺

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 1990年 
 
 『ヴォーリズの建築』『ヴォーリズの住宅』山形正昭/
 日本の西洋館といえばこの人だ
 『一古書肆の思いで』反町茂雄/古本屋さんの”宝物”探検記
 『都住創物語』中筋修/新しいタイプの町屋はこうして
 『近代の小道具』ヴァイグル・三島憲一訳/
 羅針盤だけでデカい哲学が語れる
 『当世病気道楽』別役実/歯痛とは「哲学に至る病」 
 『銀座カフェ・ド・ランブル物』森尻純夫/
 コーヒーとワインの共通点って何
 『ガイアの時代』ラヴロック、プラブッタ訳/
 土着的なエコロジー感覚を殴る思想
 『ドバラダ門』山下洋輔/わが祖父は希代の監獄建築家だった
 『和風探索』山口昌伴他/「踏み台」ひとつにも謎がいっぱい
 『カリブ海の海賊たち』ブラック・増田義郎訳/
 少年時代のイメージそのままの話
 『世界の民家 住まいの創造』川島宙次/手当たり次第に作ってきたもんだ
 『道具と機械の本』マコーレイ・歌崎秀史訳/
 とっつきにくい仕組みも一目瞭然

 1991年

 『植治の庭―小川治兵衛の世界』尼崎博正編・田畑みなお撮影/
 ここに造園界の国木田独歩がいる
 『地上楽園バース』小林章夫/賭博師が育てたイギリス温泉町の盛衰
 『バースの肖像』蛭川久康
 『美人論』井上章一/美人は悪と結論した明治以来の品定め
 『water fruit』篠山紀信+樋口可南子/
 『冬へ』荒木経惟「ノゾキの力」に向かう写真の前衛
 『重税都市』中川理/都市を動かしてきた力は税金だろうか
 『現代遺跡・現代風俗91』現代風俗研究会/
 未来より身近な過去に刺激される時代
 『上海 都市と建築』村松伸/光と闇の衝突する魔都形成の基本書
 『ぼくのコドモ時間』南伸坊/ほのかに熱い思いを呼びさます淡々描写
 『こども遊び大全』遠藤ケイ・絵と文/
 昔よくやった集団の肉体運動五六種
 『人工現実感の世界』服部桂/
 コンピューターで作る映像演出の怖さと驚き
 『フジ三太郎』サトウサンペイ/男女を通して世間を描いた”時間泥棒”
 『稀書自慢 紙の極楽』荒俣宏/本の収集をテーマにした爽快な一冊
 『永遠の力道山』大下英治/
 墜ちた偶像ではなかった英雄レスラーの虚実
 『芝棟』亘理俊次/民家の屋根に生える植物の効能と風情

 1992年 

 『東京の都市計画』越沢明/骨抜きされた後藤新平の震災復興計画
 『日本留学精神史』厳安生/
 日本の文明に目覚めた近代中国人が歩んだ軌跡
 『パティオ―スペイン・魅惑の小宇宙』藤崎光政/
 水と緑を演ずる中庭の美しさ
 『微粒子が気候を変える』三崎方郎/大気汚染メカニズムの複雑さと単純さ
 『人間の由来』河合雅雄/「家族」が成立して、初めてサルはヒトになった
 『手塚治虫はどこにいる』夏目房之介/コマ割りと描線の分析で作品を語る
 『言語学大辞典・世界言語編』亀井考・河野六郎・千野栄一編著/
 日本の学者の快挙は文化誌としても面白い
 『大モンゴルの世界』杉山正明/商人として世界を統治したモンゴル人
 『少年とオブジェ』赤瀬川原平/日常物品をめぐる視覚と言葉の二人三脚
 『柴玲の見た夢』譚●美/天安門事件を「人間の事件」として再現
 『同潤会アパート原景』M・ブルディエ/
 外国人が研究した日本初の近代的集合住宅

 1993年

 『秋野不矩 インド』『画文集 バウルの歌』秋野不矩/
 「花鳥風月」とは別の乾いた日本画の世界
 『郵便配達夫 シュヴァルの理想宮』岡谷公二/
 奇怪な石の迷宮にきらめく無垢な魂
 『黙阿弥』河竹登志夫/最高の座付き作者がその名に秘めた自負
 『うわさの遠近法』松山巌/明治から敗戦時までのうわさの生態史
 『森の掟』酒井忠康/視覚の奴隷化した触覚の解放を訴える
 『東京再発見』伊東孝/黙する土木建造物を雄弁に語らせて
 『沈黙の艦隊』かわぐちかいじ/緊迫感みなぎる潜水艦の戦闘シーン
 『美術という見世物』木下直之/新しい領分を切り拓いた明治美術研究
 『墓と葬式の社会史』森謙二/「さわらぬ神」の歴史と現状を面白く描く
 『従軍カメラマンの戦争』公表を拒んできた第一級の戦場写真
 小柳次一・写真/石川保昌・文と構成
 『騎馬民族は来なかった』佐原真/「伝説」を事実の光で正す偉業
 『愛はなぜ終わるのか』H・E・フィッシャー、吉田利子訳/
 結婚や愛情に対する即物的な解釈

 1994年

 『エミシとは何か 古代東アジアと北方日本』中西進編/
 穴と樹上に住んだ蝦夷の心 
 『日本のかたち・アジアのカタチ』杉浦康平/
 耳を澄まし「形」の言葉を聞く
 『やわらかいものへの視点』村松貞次郎/
 発明に没頭した「永久動力大先生」の墓碑銘

 1995年

 『身体の零度』三浦雅士/日常のさりげない所作に宿る「思想」
 『図説 藁の文化』宮崎清/不憫なワラが頼られるワラに変身
 『編集狂時代』松田哲夫/”オタク力”が発揮する編集術
 『弥生文化の成立』金関恕他/農具が語る「稲作文化を広げた縄紋人」

 1996年

 『ロンドン』鈴木博之/二歩も三歩も踏み込んだ都市入門書
 『江戸地代 古地図をめぐる』山下和正/
 「つけとどけ用」など様々な九十五の地図
 『杉浦日向子全集』/抜ける空のような「江戸」を描くマンガ
 『木を読む』林以一・語り/鹿熊勤・編文/
 木挽(こび)きが美しい木目(もくめ)の味わい
 『カラオケ・アニメが世界をめぐる』白幡洋三郎/
 あちこちで現地化する日本の生活文化

 1997年

 『消えゆく左官職人の技 鏝絵』藤田洋三・文と写真/
 土とコテで作った怪作、力作
 『短歌パラダイス 歌合二十四番勝負』小林恭二/
 "歌の相撲"五百年ぶりの復活
 『住宅道楽 自分の家は自分で建てる』石山修武/
 奇怪な注文主たちと建築家の奮闘記
 『夢の場所・夢の建築』吉武泰久/二五年間の夢に現れた「場」を分析
 『フランク・ロイド・ライトと日本文化』K・ニュート、大木順子訳/
 浮世絵とモダニズム建築の関係

 1998年

 『免疫学個人授業』多田富雄・南伸坊/
 免疫学アレルギーはこの一冊で解消
 『闘牛の島』小林照幸/角による破壊力、その技、牛の相撲は激しい
 『性とスーツ 現代衣服が形ずくられるまで』
 A・ホランダー、中野香織訳/ネクタイは男根のシンボルか
 『建築MAP京都』ギャラリー・間編/千二百年の京都建築にアクセス 
 『長江文明の発見 中国古代の謎に迫る』徐朝龍/
 覆い隠された最初の文明に新しい光
 『DISCONT  不連続統一体』アルキテクト編/
 建築の根源を求め続けた吉阪隆正の生涯
 『文房四宝 墨の話』榊莫山/妖気がひそむという墨の魅力
 『海の味 異色の食習慣探訪』山下欣二/
 メダカの佃煮を食べてみよう
 『室内化学汚染』田辺新一”シックハウス”対応の基本書
 『庭の楽しみ』A・S-ジェイムズ著、O・ランカスター絵、横山正訳/
 休日にはハーブを植えてみようか
 『現代思想としての西田幾多郎』藤田正勝/
 哲学と文学の「未分以前」を考えていた
 『ソムリエ世界一 田崎真也物語』重金敦之/
 少年時代の遊びが育んだ舌と鼻

 1999年
 
 『拳の文化史』S・リンハルト/ジャンケンの歴史から解く日本社会
 『ことばの起源』R・ダンバー、松浦俊輔・服部清美訳/
 ゴシップと猿の毛づくろいの関係
 『歴史の現場 幕末から近・現代まで』松本健一/
 重要なのは「一人でいて寂しくない」人間
 『ハッブル宇宙望遠鏡』E・スコット、小林等・高橋早苗訳/
 宇宙と対面する地球代表はアメリカ
 『南イタリアへ!』陣内秀信/忘れられた街々をたずねて
 『素敵なダイナマイトスキャンダル』末井昭/
 ”底抜け”編集長の波乱に富む半生
 『地球生活記』小松義夫/人の住まいを一つの宇宙として描く
 『日本の神々』谷川健一/便所の神さま、風の神さま……様々な神
 『石器時代文明の驚異』R・ラジリー、安原和見訳/
 石器時代は人類の文明活動の基本
 『王道楽士の交響楽』岩野裕一/ハルビンは「東のパリ」だった

 2000年

 『小屋 働く建築』中里和人・安藤邦廣・宇江敏勝/
 全国各地の”極小建築”が丸ごと一冊
 『宇宙を呑む アジアの宇宙大巨神の系譜』杉浦康平/
 体を通り抜ける微風のそよぎとは
 『近代日本の郊外住宅地』片木篤・藤谷陽悦・角野幸博編/
 日本全国の宅地開発の歩みを捉える
 『イサム・ノグチ 宿命の越境者』ドウス昌代/
 二つの母国を持つ彫刻家の波乱の生涯
 


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