散文
谷川俊太郎 一七三三円
旅と出会い。日々と予感。音楽と宇宙。生きることへの熱い憧れと幻滅──。生の充実と廃墟のあいだにそっと置かれた谷川俊太郎の散文。これは、自らの孤独を見つめながらおよそ10年間書きつづられた詩人の手帳である。言葉の発語される場所を穿ち、詩人の鋭い感受性のありかを示すエッセイ集。

野溝七生子というひと

矢川澄子 二五四八円
大正・昭和の文壇で特異な地歩を占めた作家、野溝七生子。彼女はまた、辻潤をはじめ男たちを引きつけてやまぬ 魅惑的な女でもあった。暴君的な父、若き日の恋、四半世紀に及ぶ孤高のホテル暮らし……その生の軌跡を愛情をこめて証す。「人生を描きだされた女性と描きだした女性の、この世での『団欒』の深さが切々と心をうつ」(読売新聞)

猫の耳そうじ
工藤久代 一六三一円
ささやかな喜びこそが、思いがけず人生の糧となる。表題作ほか「花火」「化粧歴」「魚屋さん」「幸福の木」など、掌篇51。畑のはなしから道具のこと、自然の移り変わり、おつきあいのこと、年経てはじめて見えてくること──。なつかしい暮らしぶりや忘れかけていた振る舞いが、淡々とした筆致のなかから透けてみえてくる。珠玉 の随筆集。

やっとひとり
小沢瑞穂 一八三五円
娘が巣立ち、初めての一人暮らし。さあ、これからが私の本番! 50歳の誕生日にピアスを入れる。たった一人で家を買う。NYを気ままに散歩する。どんなことでも、自分が一番したいようにする──これが私の流儀。翻訳のコツから遊びの方のルールまで、人気翻訳家がのびやかに綴る大人の女のナチュラルな生き方、軽やかな歳の重ね方。

アウトサイド
マルグリット・デュラス 佐藤和生訳 二七三〇円
パリの裏町で生きる名もない人びと。三面記事をにぎわす男と女の愛の狂気。犯罪者の抗いがたい真実。女優バルドーやジャンヌ・モローの肖像。敬愛する作家バタイユとの対話。子供たちへの宇宙をめぐる聞書き……。未知との出会いにたゆまぬ 刺激をうけた『愛人』の作家デュラスが描く、知性と情熱とユーモアあふれる珠玉 のエッセイ27篇。

母、美しい老いと死
アンヌ・フィリップ 吉田花子訳 一七八五円
死にゆく母に、わたしは何ができるだろう? ままならない体をおして、ひとりで暮らす自由を守りぬ いた母が、いま臨終の床にある。希望のない延命措置は退け、あたうかぎり自然な死をこの家で迎えたい──望んでいた最期をまっとうできるよう、医療者の力をかりながら娘はよりそう。九十歳で逝った母の最晩年を綴る切実な記録。

そして映画はつづく

キアロスタミ、プールアハマッド著 ゴルパリアン、土肥悦子訳 三〇四五円
世界中から絶賛されるイランの巨匠アッバス・キアロスタミ。繊細にして豊饒なその作品は、いかにしてつくられるのか?瑞々しい秀作『友だちのうちはどこ?』製作ノート、エッセイ、黒澤明監督との対話から、すぐれた映画作家の思想と方法を解きあかす。フィルモグラフィほか詳細なデータを付した、キアロスタミ映画のすべてを明かす一冊。

未来映画術『2001年宇宙の旅』
ピアース・ビゾニー 浜野保樹、門馬淳子訳  四九三五円
スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』の製作過程は多くの謎に包まれていた。著者は当時の一次資料を発掘し、その製作過程を解きあかすことに成功した。貴重な多数の図版に加え、シノプシス全文、当時のレビュー記事を収録した本書は、すべてのファンが待ち望んだ、メイキング・オブ・『2001年宇宙の旅』の決定版だ。

小津安二郎のまなざし
貴田 庄  二四一五円
小津安二郎の映画には、一見物語には無関係に思える奇妙なショットがちりばめられている。枕もとに置かれた目覚し時計。風にひるがえる洗濯物。煙のたなびく煙突。……。小津の観客には忘れがたいそれらのショットを精細に分析し、その映画術の深奥に迫る。小津映画の秘密をすみずみまで解き明かす、画期的な書き下ろし評論。

定本 映画術
A・ヒッチコック、F・トリュフォー 蓮實重彦、山田宏一訳  四二〇〇円
これが映画だ! 映画の巨匠が華麗なテクニックを大公開。サイレント時代の処女作から最後の作品まで、五二〇枚の写 真を駆使して語りつくす。「まず読み物として興味津々」「技術面だけにととまらず、技術と主題、形式と内容とが不可分のものであることを、じつに説得的に語っているところに本書の真の価値がある」(朝日新聞評)

*表記の定価は2000年2月現在のものです。定価、仕様は予告なく変更する場合があります。