複製技術時代の芸術

ヴァルター・ベンヤミン  編集解説・佐々木基一 一九九五円
複製の技術の発見は芸術のありかたを根元から変革した。芸術の私有観念を排しきった複製技術の意味をまっすぐにみすえ、破壊的要素をになう弁証法の推進力を欠いたすべての文化史的芸術を真向から否認した、ベンヤミンの先駆的、独創的な映像芸術論。注目の二大論文「複製技術の時代における芸術作品」「エードゥアルト・フックス」を収録。

ドイツの人びと

W・ベンヤミン 丘沢静也訳  一九三七円
ゲーテやグリム兄弟の手紙、カントやニーチェに宛てられた手紙など、十八世紀末から十九世紀末までの百年間におよぶ有名無名のドイツの人々の手紙25通を公開、その一通ごとに極めてユニークな読み方を付した、ベンヤミンの知られざる名著。ナチスの手によって地下にもぐったドイツ精神の相貌を鋭く掘りおこす。

ベンヤミンの黒い鞄 ──亡命の記録
リーザ・フィトコ 野村美紀子訳  三九七五円
ピレネーを越えれば自由がある……。第二次大戦下、ナチスから逃がれる亡命者の中にW・ベンヤミンの姿があった。不幸な結末を迎えた彼の亡命の際、山越えの案内をした一人のユダヤ人女性が、自らの亡命の途上で出会った様々な場面を鮮明に回想する。H・アーレントらとの収容所脱走など冒険小説さながらの日々。歴史の空白をうめる記録。

ベンヤミン/アドルノ往復書簡
W・ベンヤミン、T・W・アドルノ 野村修訳  五四〇三円
一九三〇年代を代表するドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンとテーオドーア・W・アドルノ。二人が交わした書簡の現存するすべてが初めて集成された。危機の時代に、「共同で哲学することを運命としていた」(アドルノ)二人の、孤独な仕事と友情を、あますところなく伝える121通の貴重な往復書簡集。

三文オペラに恋して
エレーヌ・ファインスタイン 池田香代子訳  二四一五円
一九二〇年代、ナチス台頭前夜のベルリン。キャバレーのウェイトレス、フリーダは、詩人・劇作家のブレヒトに出会う。女は身体からわき上がる思いをステージで歌い、男は腐敗する社会への怒りを演劇にたくした。モスクワ、ニューヨーク、東ベルリン……戦争と政治の嵐が吹き荒れた時代、ブレヒトとかかわり生きた女性の生涯を描くモデル小説。

トクヴィル伝
アンドレ・ジャルダン 大津真作訳  九〇七三円
革命に揺れる19世紀フランス。名門貴族のトクヴィルは新世界アメリカを旅する。その成果の『アメリカにおける民主主義』は20世紀大衆社会を予見した名著として、また大著『旧制度と大革命』は今日の「新しい歴史学」の源流として再評価のときを迎えている。トクヴィル史料研究の第一人者によりその思想の全貌を実証する初の決定版伝記。

公共性の喪失

リチャード・セネット 北山克彦訳  六〇九〇円
現代社会は「公」と「私」のバランスを著しく欠いた社会である。近代社会の成立以来の歴史をひもとき、政治、メディア、都市生活からファッション、芸術にいたるまでを素材に現代社会のメカニズムをするどくえぐる。アメリカの文化社会学者による刺激的研究。「明日の日本社会の骨格を考える上で、この上ない手掛かりとなる」(毎日新聞)

現代イスラエルの預言
アモス・オズ 千本健一郎訳  二九四〇円
一九九三年、ラビンとアラファトとは世紀の握手をかわし、ついに中東和平の幕が開いた。なぜイスラエルは占領政策をやめ、パレスチナとの和解を選んだのか?。「正義よりも名誉ある妥協を──イスラエルが生きのびる道はこれしかない」〈現代イスラエルの預言者〉と世界的に評される作家が、和平への確信を語りつくす緊迫感みちたエッセイ 。

ユダヤ国家のパレスチナ人
ディヴィッド・グロスマン 千本健一郎訳  三四六五円
世紀の握手にはじまった中東和平。だがイスラエル国内のパレスチナ人には、和平の恩恵はまったくない。市民権をもちながら公的差別に甘んじなくてはならないことへの諦めと憤り。占領地の同胞への羨望と憎しみ……。イスラエル国家の軋みを炙りだす渾身のルポ。「二流市民の苦痛と挫折を探った優れたドキュメンタリー」(北海道新聞評)

スペイン革命−全歴史
バーネット・ボロテン 渡利三郎訳  七九五二円
スペイン内戦とは、はたして民主主義とファシズムとの戦いだったのか? 激烈な内部抗争と列強の思惑。ソ連への金移送をはじめとするミステリアスな事件のかずかず。……一九三六年の内戦勃発から三九年の終結までを、膨大な資料を駆使してダイナミックに描きだす。隠されていた歴史の真実を浮かび上がらせ、現代史を書き換えた幻の大著。