奇妙な果実 ――ビリー・ホリディ自伝
油井正一・大橋巨泉訳 一九九五円
すべてのジャズはビリー・ホリディにはじまる。白いくちなしの花を髪にかざした「レディ・ディ」の輝かしい唄声。人種差別、麻薬、売春、そしてブルース。絶望にうちひしがれ、孤独のうちにうずくまる一人の女がジャズの響きともに鮮やかに甦える。ジャズの不滅の女王がみずからの真摯な半生を語る魂の地獄めぐり!

ミンガス ――自伝・敗け犬の下で

チャールズ・ミンガス 稲葉紀雄訳 三九九〇円
白人の社会では、音楽家としてすぐれていようと、黒は黒なんだ。烈しく怒りをたたきつけるミンガス。今世紀最高の音楽家、性の巨人、麻薬患者、伝説の霧につつまれたミンガスの本当の姿があきらかにされる。幼いころからの自分をみつめなおし、バードやモンクなどとの知られざるエピソードをまじえつつミンガスがおくる問題の書。

チャーリー・パーカーの伝説
R・G・ラテズナー 片岡義男訳 三七八〇円
「バード」の愛称で親しまれた不世出のアルトサックス奏者、チャーリー・パーカーの突然の死は、強烈な衝撃となって人々のあいだを駆けぬけた。アート・ブレイキーやマイルス・デヴィスをはじめとする多彩な顔ぶれによる証言を軸に、ビバップ革命の創始者「バード」の生涯を余すところなく再現。大和明氏による「バード」論一〇〇枚を収録。

ジャズの本
ラングストン・ヒューズ 木島始訳 二二〇五円
終生ジャズを愛した黒人詩人ラングストン・ヒューズほど、黒人の魂の歌としてのジャズを語るにふさわしい人はいない。心のなかのブルースの国に住むすべての人々のために、ヒューズが暖かな詩人のハートの言葉で、ジャズのすべてを書き綴った素晴らしいジャズの本! 簡潔で、しかも本質的なジャズの入門書。

やし酒飲み
エイモス・チュツオーラ 土屋哲訳 一六八〇円
ここはアフリカの底なしの森。やし酒を飲むことしか能のない男が、死んだやし酒づくりの名人をつれもどしに、「死者の町」へ旅立つ。頭蓋骨だけの奇怪な生き物。地をはう巨大な赤い魚。うしろ向きに歩く死者の群れ……。幽鬼が妖しくゆきかう恐怖の森を、魔法の力で変幻自在に姿を変えてさまよう、やし酒飲みの奇想天外な冒険。

ボルヘス怪奇譚集
J・L・ボルヘス A・B・カサレス 柳瀬尚紀訳 一五〇〇円
印度や中国の故事に、アラビヤンナイトの世界に、もちろんカフカやポーの作品に……古今の厖大な典籍を渉猟、その博識博捜のかぎりをつくしてボルヘスが選び抜いた、途轍もない怪談奇談・珍聞異聞九十余篇。「物語の精髄は本書の小品のなかにある」と、ボルヘスみずから折紙をつけた絶好の読物。イラストレーション=小島武

青空

ジョルジュ・バタイユ 天沢退二郎訳 一七八五円
スペイン戦争前夜。真っ黒い予兆をはらんだ青空の下で、破滅に瀕しながら〈黒いイロニー〉を求め続けた孤独な魂の彷徨を、息づまるばかりの切実さで描くバタイユの傑作。1935年に書かれたまま、なぜか発表まで20年間作者自身によって遺棄されていたこの本源的作品は、その緊迫した言語を通じて何を告知するのか。

脱病院化社会 ――医療の限界
イヴァン・イリッチ 金子嗣郎訳 二五二〇円
現代の医療は、病気をなおすどころか、新しい病気をつくりだしている。私たちは、病院における専門的治療や氾濫する薬を無自覚的に受けいれることで、日々健康を脅されているのだ。民衆の自律性にもとづいて専門家の管理を無化する批判的理論を、教育、交通の分野で精力的に展開してきた著者が人間の生と病と死の問題にとりくんだ画期的書。

マゾッホとサド
ジル・ドゥルーズ 蓮實重彦訳 一九九五円
なぜ、マゾッホは復権されなければならないか。文学史上、そして精神分析学においても、不当に歪曲されてきた十九世紀オーストリアの異色作家マゾッホの宇宙がいま甦える。「サディスムーマゾヒスム」の惰性的な対比を緻密な論理でつき崩し、マゾッホ文学の独創性と優れた現代性を証す、七〇年代を担うフランスの思想家ドゥルーズの画期的な書。