隣人記
鶴見俊輔 二四一五円
人生を振り返ってみると、そこには多くの隣人たちがいる。小学校の同級生。アメリカで出会った哲学者。家族の人たち。そして時代を共に歩いた同伴者や先を歩いている人々。人々だけではない。書物もあり食べ物もありテレビも隣人。老いが深まるにつれ隣人はゆったりと姿を現わしてくるのだ。淡々とした年の重ね方の中ではぐくまれた死生観が聞こえてくる。

期待と回想 上・下

鶴見俊輔 各二四一五円
「私は不良少年だった……。」戦後日本を代表する哲学者が、七十余年にわたる自らの思索の軌跡を語りあかした。父母との葛藤。ハーヴァード大学での新しい記号論の哲学運動との出会い。「思想の科学」「べ平連」などの活動。桑原武夫、丸山眞男、吉本隆明らとのエピソード。読書、漫画、編集について──。明日に開かれた対話による思索的自伝。

記憶のつくり方
長田弘 一八九〇円
心の中で仄かな光を放つ、さりげなくかけがえのない経験。記憶の木はどのように育ち言葉を実らせるのか。闇、死、友だち、路地の奥、肩車、雨……。忘れられない光景、思いがけない出来事にひそむ生の一瞬の輝き。人生の秘密を鮮やかに照らす珠玉の詩文集。「虹の光彩のような言葉の束だけではなく、鋭く今を撃つ言葉がここにある」(朝日新聞評)

きもの自在
鶴見和子 聞き手・藤本和子 三〇四五円
ふだん着としてきものを着こなす知恵と喜び──。社会学者の鶴見和子さんは、四季を通してきもの暮らし。そのきもの術は、かたくるしい和服のしきたりをこえて自由自在。インドのサリーや中国の刺繍布を仕立て、帯はゆるやかに巻きつけるだけ。地球志向の思想にささえられた、健康でのびやかな「きもの暮らし」の提案。

老親とともに生きる
向井承子 一八三五円
向井さんが老父母と同居しはじめたのは、1972年の春。「親孝行も数年のこと」と思った向井さんの「誤算」とは? 老父母との20数年の暮らしを記録し、日本の老人医療・福祉のありかたを根本から問い直す本。「けっして老人を見放さずに活路を開いてゆく著者の勇気ある知恵と誠実さに心を打たれる」(信濃毎日新聞・青木やよひ氏評)

ただいま故障中! ──わたしの晩年学
上野瞭 二二〇五円
はてさて、人生いかに終わるべきか──。友の晩年に想いをはせる。土手の雑草に心を寄せる。本や映画に男と女のままならぬ人生をかいま見る。自らの意志で死を選ぶ「ハムレット法案」の成立を大胆に夢想する。歳を重ね、病いの待ち伏せにあって、はじめて思い至った日々に宿る幸福の感覚。児童文学者の痛快にして味わい深いエッセイ。

〈シリーズ日常術〉 今江祥智〔童話〕術・物語ができるまで
今江祥智 二四一五円
物語づくり30年。日々子どもの国へとはなしつづける児童文学者が、童話や絵本ができるまでの手の内を大公開。ぼくの部屋と文房具、読書法と文章術、長編の書きかた・短編の書きかた、タイトルの決めかた、ブックトーク、気ばらしの工夫……子どもから大人まで巾広い読者に親しまれる作家の全宇宙。とっておきブックリスト・ミニ童話集付。

自立する老後のために
高見澤たか子 二四一五円
老いの日々をどうやって生きるか。息子や娘の家族と同居する。あえて一人暮らしを選ぶ。老人ホームで暮らす。……日本で、ベルギーで、オランダで、それぞれの生き方を選択した人々と、その家族たち、彼らを支える病院や福祉施設を訪ねて、老後の本当の幸福とは何かを問う、書き下ろしノンフィクション。

猫の耳そうじ
工藤久代 一六三一円
ささやかな喜びこそが、思いがけず人生の糧となる。表題作ほか「花火」「化粧歴」「魚屋さん」「幸福の木」など、掌篇51。畑のはなしから道具のこと、自然の移り変わり、おつきあいのこと、年経てはじめて見えてくること──。なつかしい暮らしぶりや忘れかけていた振る舞いが、淡々とした筆致のなかから透けてみえてくる。珠玉の随筆集。

やっとひとり
小沢瑞穂 一八三五円
娘が巣立ち、初めての一人暮らし。さあ、これからが私の本番! 50歳の誕生日にピアスを入れる。たった一人で家を買う。NYを気ままに散歩する。どんなことでも、自分が一番したいようにする──これが私の流儀。翻訳のコツから遊びの方のルールまで、人気翻訳家がのびやかに綴る大人の女のナチュラルな生き方、軽やかな歳の重ね方。