ベスト版・ たんぽぽのお酒
レイ・ブラッドベリ 北山克彦訳 一八九〇円
アメリカはイリノイ州グリーンタウン。輝く夏の陽のなかを、かもしかのように走る少年ダグラス。夏のはじめに仕込んだタンポポのお酒一壜一壜にこめられた、愛と孤独と死と生長の物語。SF文学の名手ブラッドベリが、少年のファンタジーの世界を、閃くイメージの連なりのなかに結晶させた傑作。

少年キム
ラドヤート・キプリング 斎藤兆史訳 二九九三円
あるときは裏町のヒンドゥー小僧。あるときはエリートの英国少年。あるときは高僧の一番弟子。あの子は誰だ? 前世紀末インド、英露のスパイ合戦を背景に東西それぞれの知恵と流儀を生きるみなしごキム。その冒険と成長を壮大なスケールで描くノーベル賞作家の最高傑作!「キプリングは混沌をやすやすと現前とさせる」(丸谷才一氏評)

嫌われた子供
ヤーン・ミュルダール 諸岡敏行訳 二三四五円
「僕は誰にも愛されない」ノーベル賞受賞者の両親との間にできてしまった溝。悲しみ、憎悪、夢……孤独な少年は自分だけの世界を紡ぎだしていく。スウェーデンの静謐な風光を背景に、研ぎ澄まされた感性で綴る自伝小説の傑作。「『ぼく』の語る言葉は簡潔で明快だ。暗さは、いつか深まりに変わってゆく」(伊藤比呂美氏評)

なにもかも話してあげる
ドロシー・アリスン 小竹由美子訳 一六八〇円
アメリカ南部の貧困階層に15歳の母の私生児として生まれ、継父の性的虐待にさらされつづけた少女。彼女は物語を唯一の盾にして虐待のなかを生きのび、書くことでその記憶と向きあってきた。家庭内レイプ。母への愛憎。絶望に蝕まれた一族への哀惜……。すべてを語りおえたとき新しい物語が始まる。全米図書賞候補作家の詩的モノローグ。

ベスト版・人間喜劇
ウィリアム・サロイヤン 小島信夫訳 一八九〇円
14歳の少年ホーマーは、貧しい一家を背負って働く、イサカの町の電報配達。しかし、少年の行くところにはいつも悲しみの渦がわきおこる。彼は戦死の通達電報を配達する係なのだ……。多感な少年の「生」と「死」に彩られた日々をやさしくも逞しく描く傑作小説。

ふたりの世界I ベルファストの発端
ジョアン・リンガード 横山貞子訳 一八九六円
北アイルランド、ベルファストのダウンタウン。住人たちは、一本の大通りをはさんでいがみあって暮らしている。プロテスタントかカトリックか? 長く苛烈な対立は人々の心まで変えてしまったのか。ある夜、金髪の美少女セイディーと少年ケヴィンは路上で取っ組みあいのけんかをする。少女はプロテスタント、少年はカトリックだった。

ふたりの世界II バリケードの恋愛
ジョアン・リンガード 横山貞子訳 一八九六円
あのけんかの夜から3年。偶然の再会が二人の運命を変えた。プロテスタント地区とカトリック地区を隔てる有刺鉄線。IRAの爆弾テロも激しさをましていく。憎しみの渦巻くなかで、バリケードを越えた愛を選んだ若い恋人たち……。北アイルランドの戦火のなかに生きる人びとの姿を見事に描きだし、熱い感動と共感を呼んだ一冊。

ふたりの世界III ロンドンの生活
ジョアン・リンガード 横山貞子訳 一八九六円
「かならずどこかにおれたちの場所がある。なければ、その場所をつくりだそうよ」故郷を捨て、家族を捨て、海をわたって、ふたりはロンドンに駆け落ちした。大都会の貧しいアパートで、ガスこんろひとつの生活がはじまる。お金は? 仕事は? はじめて自分たちの力だけで生きていこうとする10代の夫婦が、つぎつぎに突きあたる壁。

ふたりの世界IV チェシャーの農園
ジョアン・リンガード 横山貞子訳 一八九六円
故郷ベルファストからロンドンへ。さらにリヴァプールへ。自分たちの場所を求めて旅をつづける10代の夫婦に、新しい家族が誕生した。プレンダン、元気な男の子だ。ある日、目にした小さな求人広告。「農夫求む。場所チェシャー。住居つき」ケヴィンとセイディーは都会脱出を決意する。けっしてへこたれないこのファミリーの未来は?

ふたりの世界V ウェールズの家族
ジョアン・リンガード 横山貞子訳 一八九六円
駆け落ちして4年。お金も家も、たしかな仕事もなにもない。勇気だけが財産だった。ようやく落ち着いたチェシャーの田舎暮らしもつかのま、農園主の突然の死が一家の運命をまたもや変える。「自分たちの運命は自分たちで決める方法が必ずあるよ」若い夫婦と赤ん坊、そして犬のタムシンは、ポンコツのワゴン車でふたたび旅立っていく。