ゲイでもクィアでもない男のセクシュアリティ考
第22回
それでいいのか、堺雅人


豊福剛

 それでいいのか、堺雅人、と問いたいのである。
 堺雅人って誰? って人のために、いちおう説明しておくと、若い俳優さんである。本庄まなみが出るってんで、テレ朝のドラマ「嫉妬の香り」をたまに見てるうちに、堺雅人の顔も覚えてしまったのである。それで、今シーズンのテレ朝木9の「婚外恋愛」ってのにも出ている。
 「婚外恋愛」の設定だけど、堺雅人は外車ディーラー勤務のサラリーマンで、雑誌編集者の永作博美と結婚している。永作は30歳、堺は28歳。堺は年下である。子供はいない。収入も永作の方が上で、食事の支度なんかも、帰りが早い堺が分担することが多い。
 セックスレスが続いている。堺がセックスしたいなあと思ったときでも、永作が仕事で疲れてるみたいだからと思って、我慢しているが、こっそりAVを借りていたりする。堺は、二人の結婚記念日に、残業を断って定時で帰ってしまい、ケーキを買って永作の帰りを待つ。永作は、作家先生の接待で忙しく、結婚記念日だったことを忘れている。永作が遅くに帰ってくる。永作はビデオデッキにAVのカセットが入れっぱなしになっていたことを堺に言う。堺は言い訳をするが、最後には部屋を出て、近所の公園のブランコでいじけている。永作は冷蔵庫にケーキがあるのを見つけて、ああ、今日は結婚記念日だったんだと思う。そしてブランコでいじけてる堺を慰める。
 この二人に釈由美子と根津甚八の夫婦が絡んでくる。根津は大学教授。釈は専業主婦。釈と堺は高校の同級生だったのだが、堺は気付いていない。釈は夜中になると堺の自宅に無言電話をかけてくる。この二組の夫婦がスキー場で偶然に出会う。根津はずっとビデオ撮影している。
 スキー場で出会う前に、実は永作と釈は会っている。釈は自分が書いた小説を永作に持ち込んでいたりする。「星の王子さま」の本を、好きなんですといって永作にプレゼントしたりする。かなり関係妄想である。要するに釈は自分が見えていないし、他人も見えていないのである。
 スキー場で出会ったのがきっかけで、根津は自宅に二人を招待する。
 そこで、根津は堺に「ためしにうちのヤツと、つきあってみてくれませんか」と依頼する。
 堺は断るが、永作は「別にいいんじゃない」と堺に勧める。

 第1回を見ただけなので、これからどういう展開になるのか、わからない。
 でも「嫉妬の香り」のときと同じように、堺雅人は、泣きベソのような笑顔でニヤニヤしているのだろう。
 ほんとにそれでいいのか、堺雅人、と問いたいのである。
 もちろん、堺雅人という俳優さんを問題にしているのではない。堺雅人が演じるところの、心優しい男性像について問いたいのである。
 永作と堺の夫婦関係は、男ジェンダーと女ジェンダーが入れ替わっただけじゃん、と言うことは、とりあえずできる。
 うーん、でも、入れ替わって、何が悪いのだろう。
 何も悪くないのかもしれない。
 堺雅人、フェミニストが断固支持しちゃいそうなキャラではないか。
 むしろ、「別にいいんじゃない」と言った永作博美、それでいいのか、と問うべきなのか。
 「別にいいんじゃない」と言ってしまえる永作にとって、堺というのは、実はどうでもいい存在なのではないだろうか。
 堺は、困ったような顔をしながらも、釈とデートをしたりするのだろう。堺は、自分から動くのではなく、周りから動かされる人なのだ。
 堺がそのように自分から動く人でないことを永作は知っているから「別にいいんじゃない」と言ったのかもしれない。そう言ってしまった永作にとって、堺はあまりにいい人すぎるのかもしれない。
 「別にいいんじゃない」と言われて、なぜ堺は怒らなかったのだろう。
 それでいいのか、堺雅人。たまには怒れ、堺雅人、と言いたいのである。
 でも、堺は怒らない。それが堺のキャラなのである。
 思うに、このドラマの今後の展開におけるポイントは、堺と釈がセックスするかどうかにある気がする。それとも、堺は、相変わらず困った顔で、ニヤニヤしているだけなんだろうか。
 やっぱり、それでいいのか、堺雅人、と問いたいのである。